摂食嚥下障害のはなし

先日、新潟大学大学院医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学 井上 誠 教授のご講演を聴講してきました。
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演題は「摂食嚥下障害に関わる歯科医の役割」という内容でした。
「摂食嚥下障害(せっしょくえんげしょうがい)」とは、難しい言葉ですが、わかりやすく言うと、口から食べる機能の障害のことです。私たちは普段、意識はしていませんが、食べ物を目やにおいで認識し、口まで運び、口の中に入れて噛み、ゴックンと飲み込むことで、食物や液体を摂取しています。この一連の動きを、一般的に次のように分類しています。
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(資料:岩手医科大学附属歯科医療センター 口腔リハビリ外来)
①目で見て食べ物を認知する(先行期)
②食べ物を口の中にいれよく噛む(準備期)
③舌が食べ物を後ろ側に送り込む(口腔期)
④食べ物が咽頭を通過する(咽頭期)
⑤食べ物が食道を通過する(食道期)
食べ物を飲み込むことを難しい言葉で「嚥下(えんげ)」といいます。
上の図でいうと口腔期・咽頭期・食道期の3期のことです。
そして、もう一つ
これも難しい言葉ですが「誤嚥(ごえん)」という言葉があります。
「誤嚥(ごえん)」とは、食べ物を飲み込むときに誤って食べ物が「気管」に入ってしまうことです。この時に、健常な人はむせるという症状がでます。
しかしながら、加齢や病変により飲み込み力が弱ってしまって、自分の唾液さえも「誤嚥(ごえん)」してしまう方々もいます。
「誤嚥(ごえん)」が頻繁に起こってしまうと「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」をひきおこし、肺炎で死に至ることもあるので「誤嚥(ごえん)」はある意味注意しなければなりません。
日本人の死亡原因の第4位が肺炎です。それも八〇歳以上の高齢者になってくると肺炎は死亡原因の3位になっています。
日本は高齢化社会になって、要介護の高齢者が多くなってきています。
そして、要介護の現場では「誤嚥(ごえん)」を防ぐために様々な取り組みをしているのが実情です。
摂食嚥下障害からの誤嚥を防ぐために「胃瘻(いろう)」という処置がとられていることを今回の講演の拝聴して知りました。
「胃瘻(いろう)」とはお腹から胃の中に管を通して栄養物を直接、胃内に注入して食物や水分、医薬品を摂取させる方法です。
「胃瘻(いろう)」の原因は高齢者の介護度と摂食嚥下障害とに関連しています。
いくつになっても食べることは生活の楽しみの一つです。それは高齢者も同じです。
「誤嚥(ごえん)」からの肺炎を防ぐために「胃瘻(いろう)」からだけの栄養摂取だけでは、食べるという生活の楽しみが一つ減ったことになってしまいます。
そこで、今、摂食嚥下リハビリテーション学の分野では
・ 口腔機能は明らかに嚥下と関わっている
・ 噛めることは食事内容の決定の大きな要素
という視点から摂食嚥下障害を無くすため、嚥下の機能回復をするためエビデンスを確立するために研究とデーターを集めています。
実際に、摂食嚥下障害を治療して機能を回復し、胃瘻をはずすことができた患者様もいらっしゃるそうです。
食べる楽しみが再び獲得できたことで患者様の生活の質は明らかに向上します。
摂食嚥下リハビリテーション学の分野は、歯科医が新しく患者様に大きく貢献出来る分野に今後も発展していくことでしょう。
機能を回復して生活の質を上げることは、健康寿命を延ばすことに繋がります。これからの高齢化社会に対する明るい未来がひらけた講演会でした。
ありがとうございました。
<院長:喜島>

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